札幌の冬とスキーと森脇さん。
都心から1時間以内にスキー場が複数ある絶好のロケーションにありながら、市民のスキー離れが言われて久しい札幌。ちょっと待って!最近スキーが再び”熱い”ですよ。雪やスキーとの付き合い方のアイディアをいっぱい持っている森脇俊文さんに、札幌の冬やスキーについてあれこれお聞きしました。編集部のスキー愛好家はぎも参加。(森脇さんのプロフィールはこちら

第3回 道具が進化したとき。

森脇 これは、大いなる仮説なんですけど、
あながち全て間違ってると言えないと思うんですが。
-- はい。
森脇 音楽好きな人で、昔の「ナイスミドル」な世代で、
音楽はジャズが好きだとかといって聴いていたけれど
レコードからCDに移ったときに音楽を集めるのを止めた人って、
いると思うんですよ。
-- ああ、はい。レコードのときはあんなに集めていたのに、
音源がCDになって買わなくなった人。
森脇 そのままCDに移行した人たちもいますが、
せっかくこれだけレコードを買ったのに
わざわざCDを新しく買うのもなあと思った人たち。
音が良いのはわかるけどよ、と。
古いやつは捨てるわけにもいかないから
これはとっておこうと。
でも、新しく買い直すのもどうかと思うし、
これからCD集めはじめるのも、うーん、
・・・みたいになって止めちゃった人も
いると思うんです。


-- たしかにCDに移行した時期って
レコードって無くなってしまうもののように思われました。
森脇 「レコードが憧れ」という時代は
この10年ほどですからね。
-- そうですよね。
森脇 レコードに移行してから最初の5年、10年は、
一般的にはレコードが古くすたびれたアイテムに
思われてしまった時期があった。
-- CDに買い変えてレコードを売る人もいました。
森脇 今は逆にレコードがいいよと言われたり、
DJとかもレコードを使うし、ヴァイナル切った方がいいんだ、
おれはレコードでリリースしたいんだ
っていうミュージシャンもいたりだとか。
・・・というふうになるまでの期間に、
音楽を聴くのを止めたり離れてしまった人って
いると思うんですよ、好きだったのに。
まったくそれと同じことがスキーに言えるのかなというのがあって。
「いや、すごく曲がりやすいんですよ、カービングスキーって!」
って、移行した人は言うんですよ。
移行できなかった人は、今さら道具も買って、
乗り方もちがうんじゃなあ、って思ってしまう。

-- いまのスキー板は、カービングスキーって言うんですね。
じつはわたしが最近スキー場に行ったのが2年前なんですけど、
それが19年ぶりだったんですよ。
スキー板なんかもちろん持っていないので
札幌国際スキー場でレンタルしたんです。
あれは、きっとカービングスキーだったんですよね?
森脇 2年前でカービングじゃないスキー場はないですね。
-- 久しぶりなのに、なんだかすごく滑りやすいなと思ったんです。
向きを変えたりしやすい気がしました。
森脇 そんなふうに、過去のスキーを忘れて
新しく始める人には、何の抵抗もないのだと思います。
でも、当時級を持っていた人たちにとっては、
いまさら新しい道具を買ってどうなんだろうというのがあって。
大きく道具が変化してきたことによって、
なんだか古いスキーに乗っている人のような気がしてしまう。
-- そんなに違いますか。
ほとんどスキーをしないので全然ピンと来ないんです。
森脇 スキーをしてる人たちに言わせると、
見た感じで言えば、スポーツカーと軽トラくらい違います。
みんながスポーツカーに乗ってるところに
ひとり、軽トラックに乗ってくるような感じ。
軽トラが悪いわけじゃなくて、見た目が違うと
本人は劣等感を感じる。
-- そんなに!
具体的には、うーん、
何がどういうふうに違うのでしょう。
森脇 見た目ではっきり、違うのがわかります。
太さが違うし長さが違います。
顔が違う♪癖が違う♪(・・・と、山口百恵さんの
「イミテーション・ゴールド」のメロディーで歌いながら)
えー、これが現代のスキーだとしたら、
これが昔のスキーです。
これくらい違う。

カービングスキーのイメージ

-- へえ。そっか。そっかあ。
森脇 カービングスキーが出てきてスキーを止めちゃった人たちが、
乗りやすいとわかっていても新しく買うのを躊躇するのは、
我流でうまくなった人たちが多いので、
(当時くらいの技術レベルまで上達するように)
「習う」ことに抵抗感があるからだと思うんです。
だから、たまにスキーをしていたような人と比べて、
逆にすごく抵抗があって、スキーに戻りにくいんじゃないか
という気がするんですよね。
-- なるほど・・・。
上手かった人ほど、10年以上経ってから新たに始めるのに
抵抗があるのかもしれませんね。
森脇 それに、道具をゼロから全部そろえると、
安くても、ある程度のものをウエアから全部そろえると
10万円はかかる。
-- それだけのお金を
何回乗るかわからないスキーのために使うのは
けっこうな思い切りが必要ですね。
森脇 だから、どうにか良い方法がないだろうかという点が
今後のスキーのテーマで。
ぼくは、レンタルを無料にして利用者を増やす仕掛けが
作れないものかと考えています。

-- 2年前にスキー場に行った時は、
スキー、ブーツ、ポールのセットにゴーグルという
フルセットを借りて、5千円ちょっとくらいでしょうか。
いちおう、行く前に、一式買った場合とレンタルした場合とを
比べて考えてみたんですけど、
ひと冬そんなに行かないとなれば
やっぱり借りたほうが安いなとは思いました。
森脇 それが、レンタルがタダとなれば、
みんなもっと行くのではないでしょうか。
-- わたしについて言えば「行く」と思います。
森脇 もっと多くの人が行ったら、その中から
スキーにハマっちゃう人が出てきますよね。
で、その先に何があるかっていうと、
ぜったいに欲しくなるんですよ、自分のスキーが。
だから、メーカーはスキー場にタダで配りましょうと。
スキー場も、タダでもらったら、タダで貸しましょうと。
たとえば、平日はお客さんが少なくても
リフトが回り続けていているので、
レンタルスキーをがんがん回したら良いと思うんです。
-- リフトは、お客さんがいてもいなくても動いてますものね。
森脇 お客さんがいっぱいきて、それで
スキーが好きな人が増えるんだったら、
2年後、3年後にスキーを買う人が増えるんじゃないのかなと
ぼくは思うんですけれども。
-- そもそも、いまの若い人たちは
どんなきっかけでスキーを始めるのでしょうか。
私たちの世代だったら、冬と言えばスキーに行っていましたが。
はぎ 札幌で育った人たちはたいていスキーを習っているので、
そのまま続けるか止めてしまうか、ですね。
一度止めた人を復活させるのが相当難しい
というのはわかっています。
問題は、じゃあ、それをどうするか、ですよね。

(つづく)
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話・森脇俊文
撮影協力・kenon(ケノン)(札幌市北区新琴似5条12丁目5-17)


カービングスキーについて


カービングスキー(carving ski)とは、スキー板の側面の切り込み(carve)を従来よりもきつく入れることで、曲がりやすく開発されたアルペン用のスキー板のこと。1990年代に登場し、現在はすべてのスキーメーカーがカービングスキーを生産しています。