意外なところから、出発する

「2004年のことがシンボル的なのでそのときの話をすると、元外務官僚の天木直人さんが、イラクに攻撃をしかけるときに日本人の外交官の中でただ一人だけ反対を表明した人で、外務省を追われたということをテレビを見て知ったんです。僕はそのときのニュース映像をみて言いようのない怒りと言うか、腑に落ちないところがあって。僕自身イラクとか海外のことはよくわかっていなかったのだけど、おかしいと思えることには素直におかしいと言っていいんじゃないかと、そのとき思ったんですよね。
で、何を街の人たちがやっていたかというと、街頭でアンケートをとったり、署名を集めたり、デモ行進をしたり、想像しうる範囲のことしかやっていなかったんですよね。戦争当時の赤紙を配ったりとか。ニュース番組では電話アンケートをとって、あなたはイラク派遣に賛成ですか、反対ですかとアンケートとったり。もっと全然違う視点から物事をとらえられないかなと思っていたら、ちょうど天木さんをタイムリーに見た。
そこで漠然と浮かんだのが、自分と世代が倍も離れた人と話をしたら面白いんじゃないかということなんです。世代が違う平和感というのは、すなわちユーモア感にもつながってくるんじゃないかと。ただ戦争反対と訴えるだめだけの会というのではなくて、個性というか感受性の違いというか、年の差が離れた大人とのトークというのをやってみたかった。さっき言った「素材と素材」が見つかったんですよね、「スケルツォと天木さん」という。でもそれがくっついたことでどうなるのかというのは、その時点では全然わからないんです。」
−やってみてどうでしたか。
「予想外の手ごたえでしたね。みんなたぶん、スタート地点というのをあまり意識しないというか、戦争の話題ひとつ取り上げるにしても決まったパターンがあって、そのうえで議論をしたり運動をしたりする。でも、新しく自分がスタート地点を決めちゃってもいいんだ、全然意外なところから出発して、みんなと同じゴールを走っていくと、まったくユニークなものができあがるんだなと思った。
一見するとアートイベントで、そこに引き込まれて見に行くと、イラク攻撃の話であったりとか、僕とのユーモア勝負じゃないけど天木さんとのトークショーがあったりとか。それで新鮮な視点を見せられたというのが、アンケートを見ても思ったし、社会的な反応を見ても思いましたね。」

「おそらく身体がおぼえているというか、“行っていいんだよ”というゴーサインが出るんだと思います。
行ったあとで、その天木さんの場合だと、“出かけて見るニュース”というキーワードがポンと出てきたんです。天木さんにオファーした当時はそんなことは頭の中で固まっていなくて、やる直前になって浮かんだんですね。ブラウン管を通して見るものではなくて、自分でリアルに足を運んで見たものが、“自分のニュース”になる。
一般にテレビのニュース番組として見ると、頭が固くなってしまうんですよ。ニュースというのは“news”でしょ。新しいものたち。新しい情報。それはつまり、自分が日々感じるものがニュースだから。別にテレビで見るものがニュースじゃないんです。そこに気がつきましたね。」
−ショーを見られた皆さんは、お決まりの言葉で説明されても自分とは離れたものとしてしか感じられないことが、“スケルツォと天木さん”という組み合わせによって、自分のニュースとして体験できたのでしょうね。
「そうですね。今の自分の活動をもっとも象徴的に表しているのが、天木さんとのイベントだったんじゃないかと思います。
かといって、社会的なイベントをやっているわけではないし。とりようによってはそう見る人もいるし、笑いだと思って単純に楽しんでいただけるお客さんがほとんどだし。」
*2枚目写真:by Junya Sakaguchi
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