| やの | 山中さんは、アイヌの人たちに付いて 山に入られていたことがある、というのを何かで読みました。 何回かクマの穴を探しに行かれたのですか。 |
山中さんヒグマのことを教えてください アーカイブ
第6回 のんきに暮らすふつうのヒグマを。
| 山中 | 多くの人は、クマが出てくる小説とか 映画とかでしかヒグマを知らないんですよ。 『羆嵐 すごく怖いでしょう。 |
第5回 仕組みが無い!
| -- | 本当に危険なときや、危険を防ぐための 社会的な仕組み自体が、そもそも無い、と。 |
| 山中 | そうです。 最近までは、それぞれの地域に猟友会のハンターの人たちがいて、 その人たちが趣味の一環で、 何かあれば呼び出されて撃つ、ということができた。 |
| -- | でも、趣味の範囲で、ということですよね。 |
| 山中 | そうです。社会の仕組みではなく、 趣味の人たちにおんぶにだっこなんです。 「クマが近くにいては怖いからなんとかしてください」 と地域に言われるから、行って撃つだけであって。 「仕組み」ではないんです。 |
| -- | 撃つ人がいれば撃ってもらう、という。 |
| 山中 | 撃つ必要もないクマまで撃ってしまっている ということが問題なんですけれどもね。 それでももう、「なんとかなっていた」状態では なくなりつつあるんです。 |
| -- | 本当に危険なときに対応できる状態では なくなってきた。 |
| 山中 | というのは、猟友会の人たちも どんどん高齢化してまして。 平均年齢が60才くらい。 |
| -- | そのうちに撃つ人がいなくなってしまう。 |
| 山中 | だから、もう10年もすれば、 「ただ撃ってもらえればいい」という安易なやりかたさえも できなくなるんです。 そうなったら困るなというのが現状です。 これは、北海道だけの問題ではなく、 全国津々浦々同じなんですけどね。 本州なんかも、イノシシが出てきたり、 猿が出てきたり、クマも出てきたり、という報道が あちこちでされているじゃないですか。 それは、人間社会と奥山の緩衝帯として機能していた 里山がだんだんなくなって、 里山だったところが奥山化しているというのが 一つ要因としてあるわけです。 なおかつ、狩猟をする人たちがどんどん高齢化して、 いなくなってきている。 |
| -- | 人間が都市の生活しか見ていないうちに。 |
| 山中 | 高度成長経済の時代に、どんどん 奥山へ追いやられた。 それは開発と、北海道で言えば 春グマ駆除による獲り過ぎとで、 どんどん奥山に追いやられていた獣たちが 反撃を開始しているんですよ。 |
| -- | 一方で、知床では、10/26の山中さんのブログで書かれているように 市街地近くに出てきたヒグマでも、 駆除する必要のない場合は駆除しないように、 チームになって組織的に山のほうに追いやる という対応をされていますね。 |
| 山中 | でも、そういうことが実行可能な人が、 地域社会の中にほとんどいないのが現実です。 いまは、かろうじて猟友会の 60を過ぎたじっちゃんたちがやってますけれども、 それはただ殺すだけ。 殺すだけの対応は、あと10年くらいは 何とかなるかもしれないけれども、 いろいろな手法を使って 共存を図るための技術を持っている集団が地域にあるというのは、 北海道では、知床以外にはないのです。 |
| -- | うーん。 |
| 山中 | 本州ではいくつかありますけどね。 だから、一般市民としては、 クマを引きつけないように気をつける。 レジャーとかで、あるいは仕事とかで山に入るときは ちょっとしたことに気をつけて 不幸な出会いをしないようにする。 そんな、ちょっとした心がけをすれば、 恐れることではないのですよ。 |
| -- | 守るべきことを守っていれば。 |
| 山中 | だけれども問題あるクマが出てきたときに対応するのは、 一般市民では難しいですから、 それは行政なり地域社会なりが 仕組みとして用意しておかなくてはならない。 いまあるのは、仕組みでもなんでもないわけで、 しかも趣味の人におんぶにだっこの状態さえ、10年後には消滅する。 これが現実です。 |
| -- | とにかく仕組み作りが急がれるわけですね。 |
| 山中 | タイムリミットが目の前に迫ってるんですけれどね。 行政に、すぐにでも動いてほしい問題なのです。 |
| -- | この話を、たくさんの人に聞いてほしいなあ。 |
(つづく)
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話・山中正実 ((財)知床財団)/ 協力・(財)知床財団
『しれとこのきょうだいヒグマ ヌプとカナのおはなし』
定価:1,500円(税込・送料別)
発行:知床財団
【購入方法】
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第4回 ウエンカムイ。
| -- | 「出会わない」「引き寄せない」、 私たちと一定の距離を保つこと。 それは、ヒグマによる被害を防ぐことでもあるけれど、 多くの、のんびりと暮しているふつうの ヒグマたちの生活を守ることでもあるのですね。 |
第3回 残飯や飲み残しの放置で餌づくんです。
| -- | 先日のフォーラムで統計を見て、 ヒグマの増加数と被害の数は 比例しているわけではないんだ、 ということがわかりました。 |
| 山中 | そうだろうと思います。 むしろ、おもに人間との関係において 変な習性を身につけてしまったやつが 特に悪さをするわけで、 特段クマが増えていなくても そういうクマがいれば非常に目立つわけですよ。 あちこちで畑を荒らされたり、 あちこちで人間の近くに出没してトラブルが起きたり、 というのが起きるので。 |
第2回 ちょっとした林にも「いる」?
| -- | 「山っぽいところ」に入るときには クマさんがいるという予想のもとで行動する、 ということですが。 ここでいう「山」なんですけれども。 山というと「起伏のある樹木に覆われたところ」 というイメージですが、 平地の森林はどうなんでしょう。 |
第1回 音を出そう!出会わないように。
| -- | 今日は、北大クマ研の40周年記念講演会の前の お忙しいなかお越しいただいて、 本当にありがとうございます。 よろしくお願いいたします。 |
| 山中 | よろしくお願いします。 |
| -- | 夏のあいだ、ニュースでクマ出没の報道が多かったですね。 そのときつくづく思ったのが、 北海道に住んでいるのに、私たちは 本当にヒグマのことを知らないな、 ということなんです。 |
| 山中 | 知っていれば大したことないんですよ(笑)。 |
山中正実さんプロフィール

山中正実 (やまなかまさみ)
(財)知床財団 統括研究員・事務局長。
1959年生まれ。
山口県の瀬戸内海に面した工業都市、周南市(旧 徳山市)に生まれ育つ。
北海道大学入学と同時に北大ヒグマ研究グループに所属し、知床半島や天塩地方などの山々でヒグマの生態調査活動を行った。支笏湖周辺におけるアイヌの人々による「穴グマ狩り」(春先、越冬中のヒグマを捕る手法)に同行する冬眠穴調査にも長く参加した。この調査記録は、このアイヌ民族伝統の猟法の我が国最後の記録となった。
大学では北大水産学部、及び、同大学院北洋水産研究施設海洋生態学部門でトドを中心に海獣類の研究に携わった。
1987年、同大学院博士課程を中退して斜里町に就職。知床自然センターの設立に関わり、2002年4月より知床財団に移り、現在に至る。
知床国立公園とその周辺の自然環境の保全管理にあたる知床財団の中枢を担っている。ヒグマの保護管理も知床財団の重要な任務の一つ。2006年10月、知床半島を斜里町と共有する羅臼町も、知床財団の設立者に参画し、財団の守備範囲は知床全体に広がった。
2002年には、北の海の動物センター(代表:北大大泰司教授)による戦後初のエトロフ島総合調査では、調査団長を務めた。
現在、日本哺乳類学会哺乳類保護管理専門委員会委員、野生生物保護学会理事、北海道環境生活部エゾシカ保護管理検討会委員。
●(財)知床財団
(北海道斜里郡斜里町大字遠音別村字岩宇別531番地)
http://www.shiretoko.or.jp/




