山中さんヒグマのことを教えてください
ヒグマの住む北の大地北海道。土産物店に必ずあるのはクマの木彫り。ときどき出没するニュースを見るくらい近くに住むのに、同じ大地に住む私たちはヒグマのことをあまりにも知らなすぎると思いませんか。今回のインタビューは、ヒグマのことをもっと知る導入編。野生のヒグマに日々接している(財)知床財団の山中正実さんにお話をうかがいました。山中さんのプロフィールはこちらです。

第8回 学校教育とヒグマ。

知床の野生のヒグマ 写真・山中正実(知床財団)

-- では、知床五湖ではじまる取組みではなく、
先ほど山中さんが言われた
「野生のクマを見るためのツアー」とは。
山中 さっき私が言ったのは、また別の場所のことで、
そこでは団体ツアーを受け入れることは不可能ですけれど、
ある程度距離を置いて、
ふつうに暮らしているのんきなクマの姿を
積極的に見てもらうことが必要だと思うのです。
『知床ライブラリー~哺乳類Ⅱ』(北海道新聞社)には
ヒグマのことが書いてあって、
こういうのが実現したらいいねという
海外の事例も紹介してあります。
-- それは、小説や映画で劇的に描かれる、
人間で言えば凶悪犯のような特殊なヒグマではなく、
自然の中でのんびりと暮らすふつうのヒグマのことを、
より多くの人に知ってうため、ということでしたが。
同じように、もっとふつうのヒグマのことが
「北海道の人の常識だよ」というように
知れわたったらと思います。
北海道で地域の学習として
ヒグマの授業があったらいいなと思います。
山中 北海道で、地方であれば、何年かに1回という頻度で
クマが出て集団登校になるところが
かなりあると思いますので、
少なくともそういうところではやったほうがいいでしょうね。
知床では、羅臼の学校は毎年必ず、
小学校から高校まで実施しています。
斜里町全部には広げることはできていないですが、
ウトロの小中学校では、小学校と中学校が一緒になっていて
生徒が100人くらいいますが、
そこの生徒は毎年授業を受けているんです。
いま、斜里町の他の学校にも広げようとしてます。
ウトロのほうはクマを見かけることは日常茶飯事なので、
先生たちも、登下校時にクマに出会ったときに困るから、
やりましょうと積極的です。
広げようとしても、同じ斜里でも平野部のほうの人たちは
あまり接触もないのであまり関心がないんです。
言っても「授業も込み合ってるし難しい」
などと言われるんですが(笑)。
それが、こないだの騒ぎ(10月17日に市街地に出た)で
「ぜひやってください」となったのですが。

-- 出ると、やはりそうなりますよね。
山中 市街地にクマが出るようなことは滅多にないし、
今後とも斜里平野にクマが日常的に出るということは
あり得ないと思うんですけれども。
ちょうどいい機会です。
-- そういう学習では年に1回どのくらいの時間をかけて、
どのようなことを教えているのですか。
山中 だいたい1時間です。
2種類あります。
一つは「トランクキット」というのがあって。
-- はい!うちの会社の「羆部」でもお借りいたしました。
かなり盛りだくさん入っていますね。

知床財団のヒグマ学習トランクキットの一部

知床財団のヒグマ学習トランクキットにはヒグマの頭骨、毛皮のサンプル等が詰め合わされている。

山中 あれは学校の先生などが子どもたちに解説するための
ツールとして作ってあるんですね。
使い方によりますけど、
低学年だと難しいかな。
小さい子ども向けとしては、紙芝居があるんですよ。
うちのスタッフの嫁さんが、
本も何冊か出している絵本画家なんですね。
その人が作ってくれたクマについての紙芝居があるんです。

それが一つですね。

-- 『しれとこのきょうだいヒグマ-ヌプとカナのおはなし』(※)ですね。

知床財団のヒグマ学習トランクキットの一部、絵本。

山中 親から独立したお兄さんと妹の兄弟のクマが
独り立ちしていく過程で、
お兄さんクマは、人間が捨てたごみに餌づいてしまって
結局は人間に殺されてしまう。
妹のほうは、ふつうのクマとして育っていく
という物語があって。
そういうストーリーを子どもたちに見せて。
「だからこういうことをすると
悲しい結末になってしまうんだよ、
気をつけなければいけないよ」
と教える紙芝居をやります。
そのあとで、着ぐるみのクマが出てきて、
出会ったときにどうすればよいのかという話を
やさしくする。
そういうレクチャーをしているんですよ。
-- 『ヌプとカナのおはなし』は
人間が描いているけれども
クマの目線になれる気がします。
ハイマツやドングリをたくさん食べているんだよとか、
恐ろしい猛獣というイメージからは遠い姿が伝わりますね。
山の中でこんなにのんびり暮らしているんだという
クマのようすが描かれていますね。
山中 ホッキョクグマなどは、動物園で子グマが生まれると
すごい人気者になってもてはやされるんですけど、
ヒグマの子グマなんかもすごくかわいいんですよ。
凶暴さからいうと、
シロクマのほうがヒグマよりも
数段凶暴だと思うんですけど・・・(笑)。

連れ立つヒグマの子ども 写真・山中正実(知床財団)

-- (笑)
山中 ホッキョクグマはあまり日常と関係ないからかな。
-- ああ、なるほど。
「ホッキョクグマによる作物被害」とかが
あるわけではないですものね。
北海道の自然にいないから。
山中 ほぼ肉食ですからね(笑)。
-- あはは(笑)。
肉食なのにかわいいと人気がある(笑)。
ヒグマは草食メインの雑食性ですものね。
わたしもトランクキットで学んだんですけれど。

(つづく)
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話・ヒグマ写真山中正実 / 協力・(財)知床財団
[参考]
・『知床ライブラリー~哺乳類Ⅱ』(北海道新聞社)
知床財団ウェブサイト


子どもたちに見せたいヒグマの絵本!


『しれとこのきょうだいヒグマ ヌプとカナのおはなし』
しれとこのきょうだいヒグマ ヌプとカナのおはなし 表紙

人とヒグマがともに生きる道はあるはず。そのためにはまずヒグマを知ってほしい。その思いを、ある出来事をきっかけに全く違う運命をたどることになる双児のヒグマのお話に託しました。小学校低学年以上のお子様向けですが、知床の森の四季折々の風景を切り取った知床在住の絵本作家あかしのぶこさんの世界は、大人の方でも十分楽しんでいただけるものになっています。

定価:1,500円(税込・送料別)
発行:知床財団



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